両親のお引越し

大都会へのお引越し、80くらいになると嫌がるかと思いきや、「楽しみだ、早く街で便利な暮らしをしてみたい」と言ううちの両親の好奇心の強さと、新しいものへの関心の高さに驚いた。私が新しいマンションの間取りや内装の写真を送っていたので尚更楽しみになったようだ。

引っ越しの日が決まった。その日から既に父と母の断捨離が始まった!捨てる、捨てる、また捨てる。思い出の詰まった食器や家具、ありとあらゆるものを潔く捨てて、まるでミニマリストとまではいかないが、とにかく最低限のチェスト一つとベッド、洋服など。あとは、好きな洋画のDVDのセット。見事な断捨離ぶりだった。そしてガランとした広い家は、せっせとお掃除され、飛ぶ鳥跡を濁さず、という流石の両親の行動であった。

しかも、母は身体が不自由な身である。車椅子に乗って軽々と拭いたり掃いたりして実に動きが軽やかだったのには脱帽だった。そんな両親の行動はあの年代の人たちのやると決めたら早めにやる、あとに汚れは残さない、という気概を感じた。流石だ。

引越しの日。高速道路を走って、外の風景はのどかな田園からビル街へと変わっていく。あーいよいよ新しい生活かと私の方までワクワクした。

引越しはとてもシンプルだった。業者さんがテキパキと少々の家財道具を運び入れ、配置。モデルルーム的な部屋だったのでソファーやダイニングテーブルも既にある。すぐに落ち着いた引越し当日。近所でお寿司をとって囲むと実感が湧いてきた。

母が早速、近所のスーパーに買い物に行きたがったので、食材を買いにいく。小さいスーパーが近所に三軒ほどある。コンビニもある。歩いて数分で到着。とても便利な場所だ。

ここでの暮らしはあっさりと、まるで以前から住んでいたかのように両親が順応して始まった。

この時からここでの生活スタイルを模索しつつ、確立していく両親の暮らしを半同居の形で見守ってきた。というより、アラフィフの私が身近にいることで、両親のためになっているかどうかを考えると、「娘と一緒にいられて嬉しい」「娘においしいご飯を食べさせたい」「小さい時の娘のままなんだよ、今も親にとって」というオーラが全開である。

親のためを思って引越しを敢行したものの、実際のところ親的にはちゃんと娘のお世話しなきゃ、という気持ちが以前よりなお一層強くなっているように感じる。親にとっていつまで経っても子は子だ。そういう意味では、両親と今も一緒に過ごせる自分は幸せだなあと思う。そして、そんな生活を優先させてくれるのは夫である。彼にも感謝だ。

それにしても我が両親、割り切りがいい。この彼らの決断が間違ってなかった、と言えるように私もできることをがんばろう。

そして、昔よりも気負わず、ゆるりと生活自体を楽しんでいる両親。見栄も、外聞も、肩書きも関係ない。自分たちの望む場所で、好きなことをして生活できる。

いつか、わたしも目指したい❣️

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